今日はACに関するテーマで補足とまとめの意味で記事を書いています。かなり長い記事になっていますが、途中に動画や歌詞を挟みつつ書いています。
毒親デビー・マザー・ブリッグスに育てられたエミネム(Eminem)は、AC(アダルトチルドレン)の五つの役割の概念でいうならば「問題児」の役割であり、そしてそれを見事に昇華した実例モデルのひとり、ともいえます。
エミネムがある種の鬱状態を経験していることは知られていますが、デビー・ネルソンが彼を双極性障害だと告白本でぶっちゃけてるのは、エミネム自身が双極性障害を語ってはいないので事実かどうかはよくわかりません。
ですが彼の極端なアップダウン気質は双極性的な特徴を有しているように感じられます。エミネムは子供の頃に、転校生という理由だけで学校に行く度に殴られ続け、そして学校のトイレで殺されかけた時は10日間の昏睡状態に陥いるほどの暴行すら受けています。
エミネムは自分自身が「あらゆるものに対して思い浮かぶ歌詞は全てFuck Youだった」、というほど怒りに満ちた状態への気づきを告白しています。
彼は目に映る、そして心で感じた様々な事を、凄まじい切れ味のある表現力でディスってディスりまくっていますが、私はエミネムの真正面からの闘争心が好きで、そして彼が単に暴力的な人間ではないことを同時に強く感じていました。
彼は母親のことを自分よりもヘヴィな麻薬常用者としてシッカリとディスることは忘れていませんでしたが、母を反面教師的存在としつつ、自身はそうならずにイクメン・パパとなり、
前妻のキンバリーとの間に生まれた娘のヘイリー(現在18才でミスコンクイーンに選ばれるほどのキュートさ)だけでなく、キンバリーの連れ子や姪まで扶養し、現在は一人の人間として父としてもシッカリやっていこうと頑張っています。
「ヘイリーがいなければ今の俺はない。娘には俺みたいな思いをさせたくなかった。娘の誕生で俺は目が覚めたんだ。また頑張ろうと思えるようになった。」とエミネムは語っています。
そんなエミネムですが、ヘイリーがまだ小さかった頃は、家族どころか自分自身さえ養えなかった波瀾万丈なドン底状態で、娘に会うことさえ禁じられた時期すらあり、薬物依存症とうつ病で長期間の活動休止、そしてついに倒れ、何とか一命だけは取り留めるまで人生が追い込まれていくわけです。
ですが彼は「失う物は何も無かったよ。もう沢山だった」と薬物依存症とうつ病を乗り越えて立ち上がり、『Recovery』でグラミー賞の 最優秀ラップ・アルバムに輝きます。
「問題児」の見本であるかのようなエミネムは実母をディスり続けて実母を嫌っていましたが、41歳になった彼の心境には変化が現れます。
◆ 「母の日」にエミネムがPVを通して実母に贈った メッセージ
俺はあんたを許すよ/ネイサン(弟)だってそうさ/あんたがしたこと、言ったこと、俺たちを育てるためにベストを尽くしてくれていたんだよな
「Cleaning Out My Closet」はやり過ぎだったよな/他の曲も全部/ とにかく、俺はあんたを憎んじゃいない。だって母さんだから/あ んたは俺にとっては今もきれいだ。だって俺の母さんだから
私の身近に知ってる人の中には、もう70才を過ぎて、実母はとうの昔に死んでいてもまだディスり続けてるような人もいます。やっぱり悲しいですね、そういう姿は。
Eminem – Not Afraid
Not Afraid エミネム(Eminem) の歌詞 (一部のみ引用・抜粋)
何が起こっても、たとえどんな問題が立ちはだかっても(そこから抜けられないヤツもいるだろ?) これだけは忘れるな 一人じゃないぞ (だけど抜ける気があるなら) 覚えがあるヤツは自分もだって声を上げろ
自分がやりたいからやるんだ 周りがどう思おうが関係ねえヤツらは適当にあしらっとけ それが似合いだ そんなんで俺の気が変わると思ったら大間違いだ こうなりてえと思った自分になってみせる
こんな暮らしはもうできねえ こんな生活もうたくさんだ だから今日から始めるんだ 檻を破ってここから出ていくぜ 立ち上がって,醜い自分を見つめ直すんだ
アダルトチルドレンには役割があります。
1.英雄役 ヒーロー・ヒロイン
2.道化役 ピエロ・マスコット
3.支え役 殉教者・犠牲者
4.不在役 家なき子・傍観者
5.叱られ役 問題児・悪役
過去記事を参考として紹介しておきますね。⇒ アダルトチルドレン(AC)における 家族の役割
「ありのまま」と「あるべきもの」のバランス異常
父性原理(社会的自我を育てる)・母性原理(自然自我を育てる)の「不調和・未成熟」、あるいは「不在」による、「ありのまま(自然自我)」と「あるべきもの(社会的自我)」の「不調和・未成熟と歪み」によって、「心身の健全な成長を支える家族機能」が不全状態にある時、
家族の構成員は、「それぞれが自身を守るためだけでなく、家族を守るために、負の感情・現実に防衛的対応をする」わけですが、その時に「無意識に強迫観念的に選択された役割」が、機能不全家族における家族の役割です。
「ありのまま(自然自我)とあるべきもの(社会的自我)」に関する補足として、過去記事を以下に紹介しておきますね。⇒ 自己統合の多元性 「ありのまま」と「あるべきもの」
子供の気質差・能力差によって、あるいは内向的投影 外向的投影の質の差などによっても現れ方は異なります。これに関連する過去記事も以下に紹介しておきます。⇒ 子供の無意識の成長 「不幸にする親」が無垢な愛情を歪ませる過程
「依存性」と「転移」自他境界のバランス異常
また機能不全家族は「強迫観念的な選択」であるだけでなく、不安への防衛としての「依存性」もあるため、役割の固定化・過剰化が起きやすく、その結果、その役割人格の「形状記憶化」が成人後も継続され、会社組織・様々なコミュニティーにおいて、同質の傾向を引き継ぐことがあります。
そして「依存性」のある信頼的関係で生じやすい心理に「感情転移」があります。これはカウンセラーの専門用語として使われますが、「陰性転移」を受ける場合は、敵意・不信感・猜疑心などの攻撃性・ネガティブな心理が自身へ向けられる。
「陽性性転」を受ける場合は、尊敬・感謝・信頼などの親密感の感情・ポジティブな心理が自身へ向けられる。「逆転移」の場合は、「相手の向けた正負の転移感情」に同化した自我反応になる。
実際は「無意識の感応・同化・条件づけ」としての「転移現象」は、家族だけでなく、条件を満たせばどんな人間関係でも生じます。(例えば上司と部下、師匠と弟子、友人・知人・同僚や恋人など。)
そしてこの作用が否定的な働きとなる時、自他境界(バウンダリー)を侵食する作用になり、それが慢性化すると「自他境界のバランスが失われた状態」が修復されないまま鈍麻化し、いつも他者を過剰に受け入れたり、逆に反動での「過剰防衛・拒絶的反応」になったりします。
そして「他者の不適切な心理作用」を受け続けて調子を崩したり、時と場合によってはそれを悪用した洗脳や搾取が行われています。またそれへの過敏すぎる防衛反応では、病的な他者への嫌悪による排他的な人格形成がなされるわけですね。
ではここで、デミ・ロヴァート(Demi Lovato)の歌「Skyscraper」の歌詞と動画を紹介します。
彼女は8歳の頃にイジメにあい摂食障害を発症、11歳にうつ病でリストカット・自傷行為を続け、過食症と自傷障害、双極性障害(躁鬱病)を患っていたことを告白しています。
「もし私の身体の治療を続けなければ、生き続けることができなかったわ」そう語る彼女が治療・リハビリを行い戻ってきた時にリリースされた曲です。
Demi Lovato「Skyscraper」の歌詞 (一部のみ引用・抜粋)
あちこちで雨が降ってる
私は空を見上げ
そこからこぼれ落ちてくる涙を両手で受ける
これでお別れなのにあなたは何も言わない
最初から無理だったんだと言ってるみたい
ここまでしなきゃならないの?
私にはもう値打ちなんかないって思わせたいの?
お望みなら私から全てを奪えばいい
紙やガラスみたいに
私が弱くて脆いと思うなら
徹底的にたたけばいい
さあできるものならやってみて
それでも私は立ち上がる
大地にそびえる摩天楼のように
きっと立ち直ってみせる引用・参考 元⇒ Skyscraper デミ・ロヴァート(Demi Lovato)
Demi Lovato – Skyscraper
ではもう少しこの「家族の役割」の気質の違いを多角的に見ていきましょう。
「家族のホメオスタシス」で言えば『「自他分離による自己肯定感」が少ない「自己分離的な自己愛型」の「父性・母性・子性」の優位な家族状態 』では、「家族全体」で一人前の人間のような働きをしていることがあります。
つまり、本質的に「父がいても心理的に父はいず、母がいても心理的に母はいず、子がいても心理的に子はいない」状態なのです。
なので、その不足分を家族の誰かが補うことで父、母、子を演ずるわけですが、結局それは本来の自然な役割ではないために、無理が生じてバランスを崩す、ということです。
(社会的自我が強い・家族のシャドーの抑圧・陽性のペルソナ・プライド・依存性が高い)
父性と子性を担当し、「家族のホメオスタシス」の交感神経、大脳新皮質的な役割であり、家族評価の底上げをする役割。陽性転移を受けやすい。
期待・理想という重荷を背負わされた強迫観念的な外発的動機づけが優位な努力家であるため、他者と競争・比較ばかりする負けず嫌いな性格となり、
優等生ではあっても自己無価値感が生じやすく、人より優位に立つことでしか自身の存在価値を守れないと感じる傾向が強い。そして、「良い子」を無理に演じ続けてきた結果「燃え尽き症候群」にもなりやすいタイプである。
(感性が豊か・シャドーは陽性、ペルソナは陰性。 家族のシャドーをオブラートに包む・優しい・家族の不安を逸らし癒す係)
母性と子性を担当し、「家族のホメオスタシス」の副交感神経・大脳辺縁系的な役割で緊張緩和の役割。陰性転移を受けやすい。
苦しくてつらい感情・空気を敏感に察し逸らすことに強迫観念的に振る舞うため、注意が散漫になりやすく弱みを見せるのも苦手。「おどけること」で逸らす繊細で優しい気質傾向があるため、正面から戦わなければいけない真剣勝負時には弱い傾向。
(社会的自我が強い 優しい・シャドー、ペルソナが共に陰性。我慢強い 家族の管理・統制・まとめ役 家族のシャドーの現実的な面倒をみて後始末する係)
母性と父性を担当し、「家族のホメオスタシス」は脳・身体の全体。家族を底から支える大黒柱役。陰性転移を最も受けやすく、逆転移も引き起こしやすい。
家族の脳であり身体でもある責任の重い役 物理的・精神的な両面の負を自らに集め背負う。家族の「負の現実」の掃き溜めゴミ処理係りにされやすい傾向。
自分の生を見失いやすく、人のためだけに生きる、あるいは搾取され続ける傾向。「人の役に立つ」が自分の承認欲求を満たすことに置き換わっている状態なので、人の役に立てない時は「自分は無価値な人間だ」と自虐する傾向がある。
(優しい・中性・自我が弱い・家族のペルソナ・シャドーの観察係)
子性を担当するが、家族の役割から離れることで自己防衛する。そのため目立たないよう問題を起こさず干渉もせず存在を消す。
「自分なんかいてもいなくても同じ」という空虚さ・寂しさ・孤独感を心の奥に持ち、自己主張することはせずに冷静に俯瞰的に家族と世界を見つめる。
その結果、主体的で積極的な表現が苦手になり、家族・世界・人間と深く関わることを恐れる傾向。受動性が強く、人の目や批判が怖く、それを気にするため、過剰に空気を読んで無難で目立たない消極的行動をしてしまう傾向。
(自我が強い・家族のシャドーの現実的な破壊・分解係)
子性を担当するが、「家族のホメオスタシス」の問題を身代わり的に行動化し代弁する役割。家族の「負の感情」の掃き溜めゴミ処理係りにされやすい傾向 陰性転移を受けやすく、逆転移を最も引き起こしやすい。
物理的・精神的な両面の負を外部に表現することで自ら背負う。見捨てられ不安、誰からも理解されない苦しさを抱え、自暴自棄・破壊的で攻撃的になりやすい傾向。
※ 以下は大まかな目安です。
〇 社会的自我の強さ 良い子度
➀ 支え役> ➁ 英雄役> ➂ 不在役> ④ 道化役> ⑤ 問題児
〇 自然自我の強さ(生命力を含む)
➀ 問題児> ➁ 英雄役> ➂ 支え役> ④ 道化役> ⑤不在役
〇 優しさ度
➀ 支え役> ➁ 道化役> ➂ 問題児>④ 不在役> ⑤英雄役
〇 感受性の豊かさ
➀ 道化役> ➁ 問題児> ➂ 支え役>④ 英雄役> ⑤不在役
〇 冷静さ・客観的洞察力
➀ 不在役> ➁ 支え役> ➂ 英雄役>④ 道化役> ⑤問題児
〇 2・6・2の法則(未昇華・役割固定の場合)
2(上位)英雄役 6(中間)道化役・不在役・支え役・
2(下位)問題児
〇 2・6・2の法則(重度の機能不全家族や機能不全コミュニティー・組織の場合)
2(上位)問題児 6(中間)英雄役・不在役・2(下位)道化役・支え役
※「2・6・2の法則」に関しては過去記事を参考にどうぞ。⇒ パレートの法則と「機能不全社会」の「神経症的」パーソナリティ
強迫的な役割から昇華・自己実現へ
自己実現への補足記事として今回のテーマと関連する以下の過去記事も紹介しておきますね。⇒ 自我は弱めるべき? 強めるべき? なくすべき?
◇ 2・6・2の法則(それぞれの能力・気質を生かし昇華した場合)
「外発的動機づけ」⇒ 「内発的動機付け」へ、そして以下の三つの段階的な調和バランス状態へと向かう。
1・自然自我の強化と調和: 個(内)の心身の強化と調和
2・社会的自我の強化と調和: 個(内)と他者(外部世界)の繋がり強化と調和
3・自然自我と社会的自我の調和=「自己実現」
この場合 ➀ 支え役> ➁ 問題児> ➂ 英雄役> ④ 道化役>⑤ 不在役となる傾向。
つまり健全なバランスでは、「支え役」が本来は最も上位になる。
そして社会においても本当に突出した成功者・実力者は最も謙虚で忍耐強く、他者のために役立つ存在でありながらも自己分離的ではなく、自己拡大しつつも尊大な自己肥大化は起きない調和した特徴を有しています。
「問題児」は先天的な生命パワーがあるため、社会的自我を強化し自己肯定感をシッカリすれば己の信念で道を切り開いていける。
例えば「天才」「成功者」は問題児・道化役にも多い。癒し系の仕事、芸術や芸能、などにも向いており、好きなことをとことん突き進めばいいのですが、
調和に向かえずに失敗し悪化した場合には、自己愛が優位になり、その無意識的な「補足」で過剰な「アディクション」に向かう傾向が強まります。
例えばそれが、仕事依存・薬物依存・アルコール依存・セックス依存・ショッピング依存・ギャンブル依存・ 摂食障害などです。そしてそれが慢性化している場合は治療・回復のためのエクササイズが必要となるでしょう。
補足の参考記事
〇 「条件付け」の科学的検証 強迫性障害(行動主義心理学・行動療法・認知行動療法)
〇 自己と知能の発達 自我の病理を超えて 10種類の知能と可能性へ
では長くなりましたが、ラストにデミ・ロヴァートがリスペクトするKelly Clarkson の力強く優しく暖かい歌の歌詞と動画を紹介し、記事の終わりとしますね。
Kelly Clarkson 「Mr.Know It All」歌詞(一部のみ引用・抜粋)
私をがっかりさせるサン
落ち込ませたいんでしょ
私のこと
だけど私
倒れたりしない
沈みこんだりしないから
だって誰にも
私の未来とかなんてわかんないし
誰も私のこと
バカにしたりなんてできないはず
ベイビー これは知っといて
私が切り開くの
人の後をついて行ったりなんて
私はしないから引用・抜粋元 ⇒ “Mr.Know It All” by Kelly Clarkson 訳 歌詞
Kelly Clarkson – Mr. Know It All
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