この20年間で65歳以上の暴力事件は50倍に急増。(高齢者の絶対数が増えていることを比較考慮しても増加傾向である)
前にも高齢者の犯罪増加の記事を書きましたが、その時は少年犯罪との比較のための参考としてのデータ検証でしたので、「意識」の心理学的なメカニズムを深く検証はしていません。
まず以下の3つの事実は考慮しておく必要があります。これは個人差は勿論あるでしょうが、現在の高齢者が若かった頃の社会の集合的な無意識の状態がどのようなものだったかを特徴づけています。
そしてそれが彼ら個人の無意識にも相対的に投影されているからです。
日本の犯罪統計に基づくと、
① 犯罪統計でいう凶悪犯(殺人、強盗、強姦、傷害などの暴力犯罪)は、1958年から1964年までの期間が歴史上最も多くなりました。
② 犯罪統計でいう粗暴犯(傷害、暴行、恐喝、恐怖行為などの非暴力犯罪)も、1960年から1964年までの期間が歴史上最も多くなりました。
③ 18歳以上の殺人・強盗も、1950年から1969年までの20年間が歴史上最も多くなりました。
※ 犯罪統計は、警察が捕捉した犯罪の数であり、暴露されなかったり、報告されなかったり、立件されなかったりした犯罪は含まれていません。また、犯罪の定義や刑法の改正などによっても、犯罪統計は変化します。
65歳以上の人たちの青春時代、1950年~1960年辺りは日本経済が非常に活気づいた時でもあり、同時に戦後もっとも少年凶悪犯罪が多かった時代でもあります。
この時代の少年による殺人、レイプ、親殺しの「発生率」と今(平成後期)と比較すると、
この時代、少年による殺人は現在の3倍以上、レイプは30倍以上、親殺しも20倍以上です。そして「子ども(十代)の自殺率」も現在の3倍以上でトップです。
※ なんと(十代)の自殺率は、1900(明治33)年~2013(平成25)年の100年以上の期間の中でのトップ、という有様です。
この周辺の世代の人が「最近の若者はなっとらん、昔の日本に回帰せよ!」的な事をいうから驚きです。
昨日も書きましたが、光が強ければ闇も深くなり、同時に光を支えているのは闇でもある。それはまずは無意識下で起き、そして「バランス異常が自覚されない場合」は外部に投影されます。
バランス異常が自覚されないというのは、「統合できないまま一方が抑圧化されている状態」です。ゆえに内外に敵対的、分離的な関係となって両極化されつつ強化されていく。
無意識は過剰と不足によるバランス異常を察知し、自我を安定化させようとするために、このような分裂化した両極が生まれるわけですが、この状態は不調和です。
そしてこの不調和はイジメの原理にも関連します。
よく芸能人・有名人などが「イジメ肯定」を語ることがありますが、なぜ彼らがそういうことをいうのかというと、不調和な状態で自己肥大化して成功した人達だからです。
自己肥大型の成功は、光と闇を濃くするのです。それは「活力がある状態」とも言えますが、昔は活力があり今はないからどっちもどっちだというのはちょっと違います。
昔は人はもっと無意識的であり、そのため活力の表出量は多かったともいえるのですが、無意識の活力が統合されないまま現れた場合、外側に両極を作り出し、良いことも悪いことも極端な傾向になります。
自己肥大型の成功者は、弱肉強食の「生存者バイアス」を強める傾向が見られます。ゆえにイジメ肯定的なスタンスになるんですね。
ですがそれによってもう片方の闇の深さが生まれていること、その害悪の強さと悲劇を本当の意味で理解していないのです。
逆に今の時代は無意識を細かく抑圧化しすぎています。だから良いものも悪いものも含めて活力が減少しています。なので「無意識を生き生きと機能させたままそれを意識に統合していく」ということが大事なのですが、
残念ながら、社会・組織・教育はその方向性には全く進んではなく、どんどん存在への抑圧化を強め、管理・規制を細かくして雁字搦めにするやり方が蔓延してしまっているので、
社会は一部の自己肥大者以外の多くは硬直化する傾向、活力の減少傾向へ向かい、だんだん皆が息苦しくなっていき、さらに過剰適応が進んだ場合は、窒息するかのような閉塞感に満ちた状態が形成されていくでしょう。
「悟り系」と言われるタイプの若者は、「良いことも悪いこともなにも積極的にはしなくなっただけの縮小した自我状態」であり、それは「良いことも悪いことも積極的にしていた自己肥大型の昔の人」のただの「抑圧バージョン」に過ぎないのです。
そして彼らをそうさせたのは「社会と大人」です。
前世代の自己肥大した親と男性原理優位の社会システムが、次世代の子供の自我を過剰に抑圧し縮小させたのです。これもまた集合的な無意識の反動から起きているもので、その運動の全体性は、結局理解されないないまま継続しているわけですね。
なので今の若者と社会の元気の無さは、「無意識の全体性を理解せずその統合を重視せず抑圧化ばかりしてきた社会と大人」の責任です。
以下に統計データ・説明文を「社会実情データ図録」より引用・抜粋して参考紹介します。
結論から述べると、日本の高齢者は、他国の高齢者と比べ、事実上同居している夫婦や子供との相互依存の程度は大きいが、別居の親族、友人、あるいは近所の人たちと相対的に薄い人間関係の中で暮らしている。人間関係の同心円の真中に近いほど密度が濃く、周辺にいくほど密度が薄くなるのが通常であるが、日本の場合その傾斜度が最も大きい。
高齢者の人間関係の国際比較
親しい友人(親友)との関係では、相談あるいは世話をしあう親しい友人がいる高齢者は、日本の場合、韓国と並んで、欧米よりやや少ない。
上の表に示した「心の支えとなっている人」の問でも「親しい友人・知人」をあげる者が日本の高齢者の場合、韓国と並んで、欧米と比べかなり少ないが、これとも整合的な結果である。
近所の人たちとの付き合いについては、物をあげたりもらったりする関係においては日本の場合高い比率を示すが、いざとなったときの相互扶助として病気の時の助け合いをきくと日本の高齢者の場合9.3%と、最近急速に減少した韓国(05年20.0%から10年に9.5%)と並んで、
その他の国の2~4割に比べ格段に低くなっている。日本の場合近所の人たちとの濃密な関係は少ないとみられる。
日本の高齢者が携帯電話で家族・友人と連絡取り合う比率も比較的低い(最近、どの国も携帯電話の利用率が上昇しているのでこの値は上がってきており、フランスの最近の値は05年値よりずっと高いと考えられる)。これには携帯電話料金などの問題もあろうが、
これまで述べてきたように同居している夫婦や子供との関係以外では人間関係の密度が薄いことを反映してという面も無視できない。
このように日本の高齢者の場合、同居している夫婦、家族を越える人間関係が他国に比べ希薄であり、その分同居夫婦・家族への期待が大きい点が大きな特徴となっている。
統計データ図・説明文引用元 ⇒ http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1307.html
高齢者の退行現象と人格の統合
※ ここでは「認知症」や「脳梗塞」などの脳機能障害などによる人格変化や「精神疾患」は除いた、「機能的、精神的に顕著な異常がない人」の老化と人格変化について書いています。
正常な老化においても基本的に「年をとると、脳の前頭葉という部分が縮み、感情の抑制機能が低下する」という医学的な見解があります。
そして男性の方が女性に比べてその比率が高い、というデータもあります。しかし正常な老化現象であれ、老人がみなキレやすいか?暴力的か?感情的か?といえばそうではなく、穏やかな老人も沢山います。
今回は、人格の背景にある無意識と「環境・人間関係の変化」をテーマに考察しています。
無意識を理解しないまま、それを子供や家族に投影・転移して自我のバランスをとっていた相互依存・共依存心理の精神が、老後になってその投影・転移の対象を失うと、
自身で自我を調和させなくてはならなくなりますが、その時期に脳の統合力までも弱くなるというわけです。
内外の変化によって、以前のように外部でバランスをとったり処理することが出来なくなり、全てが自身の意識、内側に向かうわけですが、それは「初めて自分自身の無意識と明確に対面した」という状態でもあるのです。
そしてその無意識との対面によって人格の統合に向かうならば内的な調和へ向かいますが、
「他者との比較」の中で競争主体で生き、「自己肥大的」に生き、「他者に自己の無意識を投影してきた人」にとっては、
長年、自身の無意識に形成された「不調和の形状記憶(スキーマの一種)」とより強く深く同一化し、さらに頑強に自己完結し、固執する可能性も高くなる状態なのです。
だから年をとってますます性格が意固地になったり自己中心的になる(退行現象)人もいれば、徐々に円満(人格の統合)になる人もいるわけです。
そして親子の双方の無意識が統合されていないことで悲劇が起きてきます。親子の場合、その葛藤・反発はもっとも強力になるからです。
以下に引用の悲しい事実も、この無意識への理解も無いまま、「人格」というものを軽視した必然的な結果なのです。
そして「お金がなくなれば支えはどこにもないような社会」、だから「お金が全て」のようになるのもある部分は必然的な結果でもあり、
そしてそのために弱肉強食化した意識が強化されてしまったことも必然、そしてその競争で過剰な負荷を強いられた側の人が暴走することもある意味必然、ともいえますね。
「IZA」 より引用抜粋
「なぜ親たちは殺されるのか 不況・超高齢化・絆…対前年26%増の衝撃」
【衝撃事件の核心】
年間約500件-。親族間による殺人事件が高止まりしている。殺人事件全体の摘発件数は減少傾向にあるが、親族間殺人はほぼ横ばいで、平成23年の1年間では殺人事件全体の半数以上を占めた。中でも親を殺害するケースは前年から26・4%の増加と深刻だ。– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
引用元⇒ http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/
631211/
◆ その他の参考リンク
◇ 少年犯罪は急増しているか(平成19年度版)
◇ 小・中学生の自殺、原因の1位は「学業不振」
◇ 高齢になって初めて犯罪に手を染めた 女性犯罪者に関する研究
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