ネガティブとポジティブの心理学  幸福と苦しみへの二つのアプローチ

 

精神科医や心理学者が病気やマイナス面を見つけるだけの専門家ならば、そこにはその先の幸福という希望がありません。もちろん深刻な病であれば「それを治すこと」が何よりの希望であり目標ではあるでしょう。

私がここで言いたいことは、それが治った後、あるいは治らないにしても安定した後のことなのです。

過去の否定的な体験や記憶、その作用による否定的な人格・性格パターンを分析し、そのマイナス面を解決できたとしても、それは肯定的な人格・性格パターンを形成する事とは違います。

心の苦しみや人生の負のスパイラルがその人自身の否定的な心理に原因がある場合に、それを認知療法や精神論などで理解して改善できたとしても、それはその人を幸福にするアプローチとはまた違います。

それではここでTEDの動画をひとつ紹介しましょう。

マーティン・セリグマンが心理学(学問としての、患者とセラピストの1対1の関係においての)について話します。病気を越えたことに注目が移ってきた今、現代の心理は私たちにどのように役立つのでしょうか?

 

ネガティブとポジティブの心理学

心身の状態をマイナス状態からゼロ状態にしただけでは人生全般の問題は解決しない場合の方がむしろ多いのです。

それは何故かと言うと、その人が心身のバランス異常を起こす以前の状態にはマイナス状態になる因子がすでにあったわけで、

心身のバランス異常を起こすようなマイナス因子は強力なものである場合も多く、ゼロ状態にするだけではまた元に戻ってしまう(繰り返す)可能性もあるわけです。

これは「形状記憶」のようなものです。専門用語では「スキーマ」という概念がこれに該当しますが、私は「スキーマ」よりもっと広い領域・範囲のものを含めてこれを考えています。

長年、その思考・癖・性格パターンで生きてきたわけで、ちょっと認知療法やら原因分析をしたくらいでは、スパンと全てが変わってしまうことはありません。

自分も他人もそう簡単に長年積み重ねた思考・癖・反応・行動パターは変えられないものです。

原因分析し思考・癖・性格パターンのマイナス面をなくそうとするアプローチには限界があります。 もちろん、「何が因子なのか」を知っておくということは大切ですから決して無意味なことではありませんが。

「前からあるクセやパターン」を変えることは凄いエネルギーと努力が必要ですよね、しかもそれを弱っている時に行え!というのはさらに難しいと思いませんか?

私はむしろ、思考・癖・性格パターンのマイナス面へのアプローチというのは気・余裕がある程度ある時に行った方が良いと思います。

元気が全くない時はまずは疲れをとり休むこと、そしてその次に、強力なマイナスの「形状記憶」へアプローチするのではなく、むしろそれを忘れる、あるいそこに意識を向けない方が良いのです。

そして「環境」の方を変えることですね。悪い環境(人間関係)ならまずはそこを離れること。

 

そして「元からあるもの」を変えるより、もっと少ないエネルギーで済む、思考・癖・性格に「新たなプラス要素」を追加していくというアプローチもおすすめです。

例えば、自分より心の働きが豊かで優れた人や尊敬できる人物などを見て「あの人はどのように思考し、どのように取り組んでいるのか?」という、自分より高いパフォーマンスを発揮している人の肯定的な面を見続けるのです。

変えるのが困難な自身のマイナス面を見続けるのではなく、人の長所を「元からある自分の性格に追加する」ことだけに目を向けるのです。

そうするとその間は、自身のマイナス面を「忘れる、あるいはそこに意識を向けない」ということが自然に出来、そのことで逆に自信・パワーを回復させていくことになるのです。

そして充分に自信・パワーが増してきたら、自身の思考・癖・性格パターンのマイナス面へのアプローチを行い、マイナスの「形状記憶」を少しづつ弱めていけばよいのです。

そうすると何かの拍子に再びゼロに戻っても、プラスの「形状記憶」の働きがある分だけ、酷いマイナス状態の再発は起きにくくなるんですね。

ネガティブとポジティブの双方のアプローチをこのように使い分けることで、より楽に、自身の在り方を変化させることが出来るでしょう。

コメント

  1. ノムラマサカツ より:

     なるほど、、、
     マイナスに敢えて一度目を向けない。
     そうですね。
     今ならば、ソレが出来そうです。
     やってみます。

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