「錯覚・投影」を科学的検証  認識・感覚の思いこみ 

 

今回は「錯覚・投影」を科学的に検証します。視覚の錯覚に関しては前回も幾つかの実例を紹介しましたが、今回は視覚のみに限定せず、認識・感覚の錯覚のメカニズムを多角的に見てみましょう。 (前回の記事は以下リンクより)

錯覚・思いこみ 騙される脳と不思議なイリュージョンアート

 

人間の脳には「カニッツァの三角形」のように、実在していない輪郭を「見る」ことができるような錯覚機能・「パターン探す」機能があります。バーチャルリアリティも人の想像力や錯覚が複合的に働いて認識する脳のメカニズムの結果です。

私たちの「認識・感覚」も、「実際に感じるもの」「現実」は完全に同一というわけではありません。例えば私たちの視覚は「今」を僅かに遅れて認識することが科学的検証によって知られています。

 

「今目に見えているもの」は、実際は「僅かに過去」であり、それは脳が編集・調整・合成した結果の視覚映像を見ているのです。人間は目で見るのではなく、脳で見るのです。

養老孟司氏が提唱した推脳論や、以前このブログでも紹介した前野隆司氏の「受動意識仮説」というものは、東洋の唯識思想に共通するものがありますね。(完全一致ではありませんが)

 

例えば「網膜」「映像を映すスクリーン」であって「映像認識する機能」ではない。そして視覚同様に 触覚・聴覚・嗅覚・味覚も「脳」が解釈して生まれる感覚です。例えば足先の痛みは足で感じるものではなく、「足で起きたこと」脳で解釈して生まれる感覚です。

 

「痛み」のメカニズムをシンプルに書いてみましょう。

足を針で刺す⇒ 刺した部分の細胞が破壊⇒ 破壊された細胞から「発痛物質」であるカリウムイオン、セロトニン、アセチルコリンなどが分泌される⇒ 「発痛物質」が知覚神経の末端に達し電気信号化される⇒ 電気信号は「脊髄」「視床」を経て大脳皮質の「体性感覚野」に送信される⇒ 「体性感覚野」で電気信号の発生場所に対応する神経細胞が反応⇒ 「足が痛い!」と感じる

 

では次は、日常の中にある認識の「錯覚」「だまし」の心理見ていきましょう。経済学研究科の柳川 範之 氏の東京大学の公開講座の動画を以下に紹介します。

 

以下動画説明文をリンク先ページより引用

経済活動では、だましだまされの関係は少なくありません。宣伝文句につられて入ったレストラ ンでまずい思いをし「だまされた!」と感じた経験のある人は多いでしょう。 

金融危機の原因と なったサブプライムローン問題も、ある意味ではだまされた結果です。一方だまされない為の対策 も経済活動では重要な役割を果たします。 

そこで本講義では、だましとその対策が、経済活動やマ クロ経済にどのようなインパクトを持っているかを平易に解説していきます

だまされないために -経済・社会におけるだまし-

経済現象におけるだましとその対策

 

政治経済学の基本的な専門用語でわからないことは、以下のページを参考にどうぞ。⇒  基礎研WEB政治経済学用語事典

 

次に紹介する動画は、東京大学 教育学研究科 教授 野崎大地氏の公開講座の動画です。この動画の講義内容は意識と無意識の関係の一面がわかります。そして顕在意識が錯覚していても、無意識は正確に理解している、というこの認識の差異を部分的に説明しているともいえます。

以下動画説明文をリンク先ページより引用

私たちの運動学習系は、経験や試行錯誤を通じて、驚嘆するほどの巧みな身体動作さえ実現する「制御器」を脳の中に作り上げます。 

「頭ではなく身体で覚えよ」とよく言うように、この運動学習のプロセスは、ほとんど意識下ではたらき、実験系を工夫してやると被験者が気づかないまま新奇な視覚環境や体性感覚環境に適応してしまうということが生じます。

本講義では、こうしたいわば「脳をだます」ことによって明らかになった、脳が身体運動制御を獲得するメカニズムについて紹介します。

だまして分かる脳が身体を操るメカニズム

 

完全なバーチャルリアリティの技術的可能性

完全なる「バーチャルリアリティ」=代替現実は、技術的に進化していますが、レジャー・娯楽というものだけでなくて、例えば過去のトラウマの治療や高所恐怖症などの治療、そして入院患者さんの心身の癒しなどにも有効であり、今後はどんどん発展していでしょう。

つまり「錯覚」を上手く使うことにより、治療や癒しも可能ということですね。

 

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