境界性パーソナリティ障害の「境界」(ボーダーライン)とは、「神経症」と「統合失調症」の境界という意味があるそうですが、
「統合失調症」が脳の機能異常から起きてくる障害であるのに対して、境界性パーソナリティ障害というのは親子関係・家族関係のアンバランスさ、不調和から生まれた「人格のヒズミ」であると考えます。
遺伝的な要素なども考えられてはいますが、仮に遺伝だったとしてもそれは生まれた後の「環境という大きな刺激・キッカケ」がなければ、そこまで強烈に負の部分が引き出されずに済んだだろうと思うため、やはり環境因子が大きいと感じます。
女性、特に若い女性に多く、統計では人口の約2%に達し、年々増えていると言われています。
境界性パーソナリティ障害は「見捨てられ不安」「空虚で曖昧な自己イメージ」があり、感情の起伏が激しいために情動制御が難しくなる傾向性があり、
また境界性パーソナリティ障害はADHD、うつ、自己愛性人格障害と併発した合併症の形をとることもあるとも言われています。参考として外部サイト記事をを紹介しておきますね。(2017/9 追加更新) ⇒ 境界性パーソナリティ障害とは?不安・衝動的になる原因・診断基準・治療・周りの人の対処法を紹介
ここで追加更新ですが、DSM-Ⅳ➡ DSM-5 へ診断基準が更新されたので、境界性パーソナリティ障害とDSM-5に関する記事を「MSDマニュアル」から引用・紹介します。
「MSDマニュアル」境界性パーソナリティ障害(BPD)より
診断基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition[DSM-5])
境界性パーソナリティ障害の診断を下すには,患者に以下が認められる必要がある:不安定な対人関係,自己像,感情(すなわち,感情の調節不全),および顕著な衝動性の持続的なパターン
この持続的パターンは以下のうちの5つ以上により示される:見捨てられること(実際のものまたは想像上のもの)を避けるため必死で努力する
不安定で激しい人間関係をもち,相手の理想化と低評価との間を揺れ動く
不安定な自己像または自己感覚
自らに害を及ぼしうる2領域以上での衝動性(例,安全ではない性行為,過食,向こう見ずな運転)
反復的な自殺行動,自殺演技,もしくは自殺の脅しまたは自傷行為
気分の急激な変化(通常は数時間しか続かず,数日以上続くことはまれ)
持続的な空虚感
不適切な強い怒りまたは怒りのコントロールに関する問題
ストレスにより引き起こされる一時的な妄想性思考または重度の解離症状
また,症状は成人期早期までに始まっている必要があるが,青年期に生じることもある。
境界性パーソナリティ障害(ボーダー)はパーソナリティ障害の一つですが、妄想性パーソナリティ障害などとは症状が異なり、診断基準のDSM-IV-TRでは「クラスターB」に分類されます。
DSM-IV-TR クラスターB
クラスターB群は下記の1~4のパーソナリティ障害を含んでいる。クラスターB群の傾向は、感傷的で感情の浮き沈みが激しく気分が混乱し変化しやすい。
他者の気持ちを操作しようと演技的に乱れたり攻撃的になるようなこともあり、外向的だがストレスには弱く傷つきやすい。
反社会性パーソナリティ(人格)障害
激しく気分屋であり、自己中心的で他者への共感に乏しく、憎しみや冷酷な感情を抱き、すぐカッとなってキレやすい。社会ルールが守れず、暴力行為以外にも盗み・薬物乱用などで逮捕されたりする。罪悪感なく社会的に無責任な行動をとり、優しさに欠け傲慢で、他者を支配したがるところがあり、人間関係はうまくいかない。
境界性パーソナリティ(人格)障害
情緒不安定であり、身近な人に対して強い依存性を持っていて、その裏返しで不快感、いらいらとを強烈に爆発させたりする。同時に空虚感・抑うつ性を深く心に内在させてもいる。そのため人間関係は他者との適切な距離がとれない。薬物乱用、浪費、リストカット、刹那的な性的行為、過食など、破壊的な衝動的行為を行う傾向がある。
演技性パーソナリティ(人格)障害
過剰な自己顕示欲求があり、人の気を自らに引きつけるために演技的な振る舞いをして人を振り回す傾向が強い。
自己愛性パーソナリティ(人格)障害
過剰な自己顕示欲求を満たすために他者を引き付けようとする。自意識過剰であり、人の評価が気になって仕方なく、ほんのちょっとした他者の言動で自信は一気に崩れ卑屈さに早変わりする。 傲慢だが非常にナイーブで打たれ弱いという両極性がある。
※ クラスターBだけでなく、クラスターA・Cも含めて、全てのパーソナリティ障害の中で最も多いのが境界性パーソナリティ障害。(全体の約半数を占める)
境界性パーソナリテ障害とアダルトチルドレン
パーソナリティ障害とアダルト・チルドレン(AC)という心理学的な概念はとても共通点が多いと感じますね。機能不全家族で育ったアダルトチルドレンに見られる精神傾向のパターンは、やはり「愛情のヒズミ」ですね。
パーソナリティ障害に共通する特徴として、「自分」に対する強いこだわりを持っていることや、「傷つきやすさ」が挙げられます。人は多かれ少なかれ、「自分」に対するこだわりを持っていますし、プライドが傷ついたりもしますが、その執着のレベルが全然異なるわけです。
パーソナリティ障害の場合は「自己愛の障害・ヒズミ」が深いレベルで起きているために、対等な人間関係のバランス感覚を持たず、結果として信頼ある関係性を自然に築いていくことが出来ないんですね。
また自己への執着心と共に空虚感も同時に強いため「百かゼロか」のような極端な思考にも陥りやすいのです。
またアダルトチルドレンがそのまま解決されずに大人になり親になった場合、今度はその子供に内的な不調和が再び投影されて受け継がれていくこともありますが、これは「みながそうなる」という決定論ではありません。
潜在意識レベルで活動している不調和の精神運動というのは、顕在意識からの働きかけではなかなか簡単には制御出来ないんですね。
「どうしてもそうなってしまう」という状態なんですね。 それはあたかも「心の形状記憶」のようにどうしても 「その癖のついた形」 に戻ってしまうものなのです。それが無意識レベルにまで及ぶ親の影響力の深さと強さなんです。
私的には、境界性パーソナリティ障害は多くの人にとってもっとも身近なものであって、そして様々な他の「心のヒズミ」とも深い相関関係がある、そんな原因のひとつなんじゃないか?と感じますね。
以下 2014年1月11日 追加更新
境界性パーソナリティ障害に関するもっと突っ込んだ記事を新たに書いたので追加しておきます。境界性パーソナリティ障害の治療・回復に関する情報も紹介しています。以下のリンクよりどうぞ。
コメント
この女性に多いという境界性パーソナリティー障害に見られる、『身近な人に対する強い依存心』が、裏がえって、の、『共依存』は、起こりえるだろうか?
と、言った事を、考えさせられます。