絵画と芸術の癒しの力   言葉では表現しきれない心象風景たち

 

人は自身の悲しみ・怒り・喜び・感動言葉や涙や笑顔や暴力だけで表現するわけではありません。人は古来から、歌や踊り、そして絵や楽器でそれを表現してきたんですね。

タップダンスの「タップ」は、黒人奴隷が白人から楽器も言葉も取り上げられた「その悲しみと怒り」を「足」で踊ったのが始まりだといわれています。

そしてロックの源流であるブルースの起源は、黒人奴隷たちが 理不尽な白人社会に対する不満や怒りを込めて歌っていた労働歌であり、そして「ラップ」は、黒人達が獄中で歌ったものがルーツだと言われています。

バレエや歌舞伎、舞踊にも、身体そのもので表現するという文化がありますね。心は言葉の意味だけで表せない、全身で伝えて初めて深いものが伝わる、そういう奥行きがあるものなんですね。

 

絵画と芸術療法

うつ病「芸術療法」の絵画展が今年の夏に渋谷で開かれました。芸術療法の先駆者として、以下の3人の名前が挙げられます。

マーガレット・ナウムブルク(アメリカの心理学者、教育者、芸術家、作家)は、精神医学と芸術療法の関係を見出し、アートセラピーという用語を定義しました。

エイドリアン・ヒル(イギリスの画家)は、結核患者として絵画を用いた治療の効果を体験し、他の患者にも芸術活動を勧めました。

エドワード・アダムソン(イギリスの芸術家)は、精神病院でオープンスタジオ形式のグループアートセラピーを実践し、広めました。

また、オーストラリアの精神医学の研究所「ダックス・センター」は、1946年に設立された歴史的な施設で、芸術療法のプログラムを提供しています。ダックス・センターは、芸術療法の歴史において重要な役割を果たしたエドワード・アダムソンのコレクションを所蔵しています。

治療の実例として、30代で赤ちゃんの死産をきっかけにうつ病を発症した女性は、絵の制作を通じて自らの喪失感を表現したことで、その後、うつ病から回復することができたといいます。

芸術療法は、患者本人の言葉では表せない複雑な気持ちの表現であり、「表現することそのもの」が患者本人の癒しにもなるだけなく、周囲の人が患者を理解する方法としても役立ち、その理解が患者を治療するうえで大きな力になるという心理療法です。

今日はアール・ブリュット(生の芸術)に関する動画を紹介します。小難しい哲学やら心理学やら精神医学の味気ない表現や理論などとは違い、芸術・音楽や絵画の素晴らしい表現力や創造力は、それに触れて見て聴いて感動するだけで、自然に安らぎ癒されてきます。

絵には言葉では表現できない遥かに多くの本質が含まれています。他者の絵を観るよりも、自分が描いたり曲を作っている時、その表現自体が癒しになっていたことを今はよく感じます。

 

アール・ブリュット(生の芸術)は、正規の芸術教育を受けていない人が生み出すアートのことで、フランスの画家ジャン・デュビュッフェが1945年に提唱した概念です。

アール・ブリュットは、精神障害者や幻視者などの社会の外側にいる人たちの作品を中心に、美術の既成概念にとらわれない独自の表現を評価しました。

アール・ブリュットは、アウトサイダー・アートとも呼ばれ、プリミティブ・アートや民族芸術、幻視芸術なども含まれるようになりました。

アール・ブリュットの作品は、スイスのローザンヌにある「アール・ブリュット・コレクション」4や、オーストラリアの精神医学の研究所「ダックス・センター」などで見ることができます。アール・ブリュットは、西洋の芸術の流れに反する、生命の衝動が造形化された芸術です。

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