禅・瞑想の精神・肉体への効果・影響の心理学的検証part3
疑似科学・迷信・オカルト的思い込みの心理学のテーマの後篇です。前回は疑似科学・迷信・オカルト的思い込みを否定的な角度から見た記事を書きました。⇒ 疑似科学・迷信・オカルト的思い込みの心理学前篇
今回は、疑似科学・迷信・オカルト的思い込みと言われているものが本当に全て「役に立たないもの、危険な病的なもの、不必要で無意味なもの」なのかどうかを、別の肯定的な角度から見てみましょう。
有名なユングの集合的無意識の理論に「元型」という概念が出てきますね。フロイトが性衝動・コンプレックス・トラウマなど、個人的な抑圧の構造として無意識を扱ったのに対して、
ユングはフロイトが追及した個人的な無意識とは異なる集合的な無意識が存在し、そこには人類に共通した様々な普遍的無意識があり、
普遍的無意識には「パターン」が存在すると言っています。それが「元型」です。
ユングはフロイトを完全否定したのではなく、フロイトの説を部分的に認めながらも、それだけでは不十分であるとしてさらなる深みを分析しました。
ユングの「元型論」を読んで興味深かったのは、ある精神分裂病患者と、古代の宗教的な神秘体験が酷似していた事例や、「集団表象」の類似性が見られる様々なケースを提示して分析している部分ですね。
古代の世界において、遠く離れた世界の民族に何故「共通した集団表象」が存在したのか?学者たちも様々な角度から説を唱えていますが、
私は、脳と変性意識と集合意識には関係性があることを分析的にだけでなく、体験的にも確認しているため、そこからユングの「元型論」を認めています。
私自身が様々な変性意識を過去に経験済みであり、問題はそこで見たものが、太古の昔から人類に共通した様々な普遍的な無意識として存在する「元型」と変わらないものだったということです。
脳にはまだまだ不思議があります。宗教の神秘体験が「元型」のもたらすものだとすれば、そこに世界的な共通性が存在する理由がよくわかるのです。
そしてそれは脳の状態ともリンクしているため、だから麻薬でも似たような現象は引き起こされます。古来からある神話や宗教的世界観は、人類が途方もない年月で形成した集合的無意識の「元型」から生まれたものだとすれば自然に納得がいきます。
そして通常は「不用意にそこにアクセスしないよう」に守られているのです。何故なら「元型」というのは普遍的な集団的一体感を生むだけではなく、
その中には生々しい恐怖のパターンなどのゾーンも存在するからです。そこへの不用意なダイレクトな接触は精神を破壊する可能性も秘めてもいます。
本来、古来の宗教や呪術的な儀式や世界観のイメージなどは、そういった安易な元型との直接的なコンタクトから守る保護的な観念的クッションの役割を果たしていたのではないか?とも考えられますね。
変性意識による元型の直接知覚は時として危険であり、そのための準備や訓練を積んでいないものがむやみにアクセスして精神崩壊する危険性から守ることが、本来の古典的宗教・呪術に見られる「元型を人為的に編集した型・伝統・文化」の社会的存在意義のひとつだったともいえるかもしれません。
幻覚はドラッグ以外にもせん妄やアルコール依存症や統合失調症やてんかんやPTSDなどで生じることはよく知られていますが、以下にてんかんに関する外部サイト記事を紹介します。
〇 幻覚症状について | てんかん勉強室 – むさしの国分寺クリニック
最近あるサイトを見つけて読んでみたのですが、このサイトを運営されている方は「幻覚性の植物」によって見た神秘体験のことを詳しくを書いているのですが、この人の強烈な神秘体験にも、個人の意識に分離されていない「普遍的な共通の型」を見出しました。⇒ 無神論者の神秘体験報告記
もうひとつ関連記事を紹介しておきますね。(2017 – 追加更新 –)
〇 LSDなどの幻覚剤は、脳を「高次の意識状態」にする:英研究結果
次は「臨死体験」の動画を紹介しますが、臨死体験ではやはり「普遍的な共通の型」いくつかのパターンが見出せます。そして深い瞑想状態でも起こるような事が、臨死体験でも起きています。
ある男性の深遠な臨死体験の物語 1/2 EE1369-2
次の動画は非常に有名なので見たことある方もいるかもしれませんが、脳科学者のジル・ボルト・テイラーが体験した驚くべき体験です。
彼女は広範囲に及ぶ脳卒中の発作により、自分の脳の機能―運動、言語、自己認識―が、1つひとつ活動を停止していくのを観察することになったのです。この過程は深い瞑想状態と重なるものがあります。この驚くべき物語をお聞きください。
「思い込みや信じ込まなくても存在しないものが見えてしまう」ことはあるのです。シャルル・ボネ症候群‐視覚障害者という幻覚症状があり、その参考となるTEDの動画を紹介します。
これは「思い込み妄想」や「宗教的妄信」での変性意識体験などとはまた異なる幻覚症状です。
神経科医であり作家でもあるオリバー・サックスがシャルル・ボネ症候群 ‐視覚障害者に生じる正常人が経験する幻覚症状の一種‐について語ります。
自身の患者が体験した幻覚を心温まる細部に渡って描写しながら、あまり社会には知られていないこの現象の生態学へと案内します。
また「レビー小体型認知症の症状」に幻覚・幻聴・実体的意識性などがあり、この場合も宗教・オカルト信者とかでない一般の方でも「通常は存在しないもの」があたかも存在するかのように見えたりします。
2017 – 追加更新 –
これに関しては50歳でレビー小体型認知症と診断された樋口直美(ひぐち・なおみ)さんの記事がとてもわかりやすく内容も素晴らしいので参考にどうぞ。 ⇒ 第8回 私の家の座敷童子
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