泥沼ですね、小保方さん、そして理研さんは。世間ではこのニュースがひっきりなしに報道されているし、好きも嫌いも感情論でギャーギャー騒ぐのは好きではないため、わざわざ書くこともないかと思いましたが、
前に書いた記事と重なる現象の拡大版であると考察されるので、今回、個人攻撃という形ではなく「社会心理」として、このような現象の背景にある力学を含めて記事を書くことにしました。
過去記事 ⇒ 「科学」の信用度と不正 客観性だけでなく主観を磨くことの必要性
個人攻撃というのは極力したくないんですね、それは感情論での抑止力強化にとらわれ過ぎると、かえって問題の本質が見落とされることが多いためです。⇒ 社会風刺とユーモア 動画 「抑止力強化」では人・現象の本質は変わらない
あまりにも酷いケースや、それとは関係なく記事テーマの参考としてたまに個人名を出すこともありますが、基本的には個人攻撃を一部含む文がある記事であれ「攻撃そのもの」が目的なのではなく、
そういうことが何故起きるのか?それが起きないためにはどのように対処することが可能か?を考えることの方がこのブログのメインのテーマです。
「問題を起こした当事者」「巻き込まれ損失を受けた人」、「そのどちらでもない世間一般」、その立ち位置によって見えるもの、感じるもの、出来ること、出来ないことは異なるでしょう。
ここでは「論文・研究・組織の不正」のテーマに絞って考察したいと思います。
「論文の不正・捏造は例外ではない閉鎖社会(大学・研究所・企業の犯罪)」 より引用抜粋
朝日新聞によると、「医学生物学分野で過去に撤回された国別不正論文数は、米独に続き日本が第3位」と有ります。研究者による不正行為は他分野でも日常的に存在します。
利益優先で何でもあり、の企業文化と似た構造が学術研究の分野でも拡大しています。
「インパクトファクター」偏重の「業績評価」が研究予算や職ポスト獲得手段としてグローバルスタンダードの世界ですから、嘘・ごまかし・データのねつ造などは「不正」ではないのです。
わかりやすくまとめると「金権」が「学術研究分野」でも「世界のスタンダード」となっています。新自由主義のビジネスモデルと共通しています。
– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
大学も結局、いじめ問題を隠す小・中・高の学校同様に、悪い印象を持たれることを恐れて、問題の全体を明確にせず、都合の悪い部分を隠そうとするケースも結構多いと予測できます。理研なんて国のメンツと巨額の資金がかかっている研究だから、さらにそうする傾向は高いでしょう。
他にも、よく問題点として指摘される点は、実験手法が研究テーマによって特殊化されていることや、少人数の実験の場合、第三者の目が入りにくいことが挙げられます。また、日本では研究倫理に関する標準化された教育がないうえ、担当教員も少ない、という現実的な問題点があり、
そして他の重要な指摘としては、第三者による再現実験というものが実際の科学の現場でほとんど行われていない、という点でしょう。
「論文の訂正、撤回公告は嘘が多いので改善すべき」より 引用抜粋
(前略)
日本の場合はさらに深刻な問題を抱えており、ジャーナルだけでなく調査機関でさえ、不正を隠蔽する傾向がある。米国のように研究公正局は存在しないし、資金配分機関や監督官庁に改善を申し出ても、研究機関に丸投げするだけで何もしない。日本は不正を改善する仕組みが不十分すぎる。
その根本にあるのは、研究者や機関の体面を保ったり、リスクを避ける意思が強く、不正問題を極力避けようとする傾向が他の国よりも強いことだ。
昨年発覚した藤井善隆の論文170編以上の捏造や井上明久事件の関連機関の隠蔽は それを象徴している。– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)
まとめると、今回の「stap細胞 論文捏造」のようなケースは科学の現場において特異な現象ではなく、以前からこの種の問題点は科学研究者たちより指摘されており、また「不正の構造」とその力学の質を見るならば、それは科学に限った話ではなく、形は違えど社会の大小の組織全体に見られる現象です。
問題の根には触れずそのままにして表面に現れた現象だけもぐら叩きして押さえつけることだけを強化するのであれば、ますます研究の現場・研究者は窒息するだけでしょう。これもまた他の社会問題同様ですね。
不正行為とその防止について
以下に紹介の記事では研究プロジェクトの不正を指摘していますが、権威主義的な体質と閉鎖的な体質、そこに過剰な競争意識・利権の癒着などが絡むと、以下のようなことが起きやすくなりますね。
⇒ 東京大学で再び改竄問題が発生 J-ADNIなるアルツハイマー研究プロジェクトで起きていた問題とは
では今回の記事のラストに、外部サイトである「科学における不正行為とその防止について」の紹介をして記事の終わりとします。
以下、「科学における不正行為とその防止について」より引用抜粋
米国研究公正局(Office of Research Integrity, ORI)では1993-97年に,生命科学関係で約1000件の不正行為の申し立てを受け、218件を調 査し76件に不正を確認したという(文献1)。
それ以後も増加は著しく、調査件数で みると、1998年の68件から逐年急増して、2001年には127件を数えている(文献2)。なお、ここでいう科学、科学者はそれぞれ技術、技術者等を含んでいる。
社会から負託された科学がその責務を果たすために、科学者が、適正な目的をたて、 適切な手段を用いて研究を遂行することの意味は極めて重い。
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