ただの物忘れ? 増える若年性認知症  認知症の症状・予防と治療の現在

 

今回は「認知症」がテーマです。この病でもうつ病せん妄などの症状にとてもよく似た症状や、認知症の種類によっては統合失調症によく似た症状なども出てきますので、それらと安易に混同しないように、基本的なことを整理しておく意味も含めて書きました。

 


他に「認知症と間違えられやすい病気」として、うつ、てんかん、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫の4つがあり、また「せん妄」も認知症と間違えられやすく、「せん妄」は高齢者ほど多くなる傾向があり、一時的な意識障害(幻覚や錯覚など)が見られたり認知機能の低下が生じたりします。

 

また発達障害と間違われることもあるようです。

55歳以上のもの忘れの12%がADHD

 

そして認知症は高齢の病気とイメージしがちですが、高齢者以外で発症する場合もあり、18歳以上65歳未満で発症するものを「若年性認知」といいます。

2009年3月の厚生労働省の調査結果では、全国で推計3万7千800人若年性認知症の患者がいると公表され、割合は男性の方がやや多く、

若年性認知症の原因疾患では、脳血管性認知症・アルツハイマー病が大半を占め、その次に多い順では頭部外傷後遺症前頭側頭型認知症アルコール性認知症レビー小体型認知症などの疾患が原因となっています。

 

認知症は治らない病気」と一般的に理解されていますが、絶対そうとは言い切れず、また未病の段階から治療を行う「先制医療」の考え方が最近では重視されてきています。年をとってからではなく、「その前からの予防」が大事であるということですね。

以下のリンクは関連記事の紹介と、若年性認知症への理解を深めるための参考PDF・サイトの紹介です。

 

認知症とは?

 脳血管性認知症   アルツハイマー病

「脳血管性認知症」は脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などの脳の血管の障害で神経細胞・神経線維が破壊され引き起こされるもので、脳血管性認知症の危険因子として、糖尿病高血圧症脂質異常症などがあげられます。

「アルツハイマー病」は大脳皮質に老人斑神経原線維変化が沈着することによって、神経細胞が死に脳が委縮することで起こると考えられています。

 

「神経原線維変化」はリン酸化されたtauタンパクが神経細胞内に蓄積したもの

「老人斑」は神経細胞毒性の強いAβタンパク(主にAβ42)が神経細胞外に沈着したもの

認知症で神経細胞死を引き起こす異常タンパク質の 生体での可視化に世界で初めて成功 —タウタンパク質病変を画像化するPET薬剤を開発—

 

アルツハイマー病の危険因子として、ApoEe4などの遺伝子型・高血圧・糖尿病・喫煙・高脂血症・クラミジア肺炎球菌への感染などがある。

 

アメリカワシントン大学などの研究チームが、2009年に行ったマウスでの実験結果では「 睡眠中にAβタンパクが減少し起床中に蓄積する」ことが確認されています。認知症に限らず、やはり「適切な睡眠」をシッカリとることは大事ですね。

食習慣では、野菜・果物赤ワインなどが良いことが言われていますが、例えば「1日に1回以上魚を食べている人」と「ほとんど魚を食い人」で比較した場合、アルツハイマーになる危険度に約5倍の差がある、というデータがあります。

また魚は「うつ」にも良い、というデータがありますが、DHAやEPAという成分の効果は高用量でなければあまり期待できないようです。その辺りの詳しいことは以下のサイト記事を参考にどうぞ。DHA・EPAはうつ病に効果があるのか

 

成分的に以下の成分がアルツハイマーになる危険度を下げるといわれています。

魚:EPA・DHA   野菜・果物:ビタミンE・ビタミンC・βカロテン    赤ワイン:ポリフェノール

 

後は 運動習慣も大切ですね。「適度な有酸素運動を習慣にしている人」は高血圧になりにくく、コレステロール値も下がりますし、運動によって脳血流量も増し、「全然運動しない人」と比べて発症の危険度は減少します。

睡眠・食事・運動」、つまり自然の摂理に沿った生活が大切ってことですね。

 

2014/7   追加更新記事

認知症を長年研究してきた鳥取大学医学部教授の浦上克哉先生のアロ療法も効果が確認されているので記事を紹介しておきます。⇒ アロマセラピーの癒し効果と使い方 うつ・認知症に効果のあるアロマ

 

 前頭側頭型認知症

45~65歳の人に発症しやすいといわれていますが、症例が少なく研究があまり進んでいないため、診断がむずかしいタイプといわれます。脳の前頭葉や側頭葉前方部分に著しい萎縮や変性が見られる病気。

脳の委縮に関してはアルツハイマー型と同じですが、部位が異なります。(アルツハイマー型は 頭頂葉や側頭葉・内側の委縮)

 

 アルコール性認知症

長期間の習慣化したアルコールの多量摂取が原因となり脳が萎縮したことで認知機能が低下する症状。長期間の断酒で改善することもあり。

 

 レビー小体型認知症

「レビー小体型認知症」と他の認知症の症状との大きな違いは「幻覚・幻視」がみられることです。

「VR認知症」レビー小体病 幻視編 のための配布資料

この病は 「α-シヌクレイン」という特殊なタンパクの塊である「レビー小体」が、大脳や脳幹部、交感神経系の神経細胞内に多く出現し、神経細胞に障害が起きることで発症。

 


(以下リンク先にて)
[動画] 生活環境を工夫する
[動画] 前頭側頭型認知症とは

認知症の情報が集まるWebマガジン ➡  認知症ONLINE

 

認知症の症状・予防と治療の現在

認知症の治療の現実は、「治療可能なもの」、「予防が重要なもの」「治療不可能なもの」の三つに大きく分けられています。

患者数が最も多い「アルツハイマー型認知症」や「脳血管性認知症」については、進行を遅らせたり症状を穏やかにすることは出来ても、まだ完全に治す医学的方法はありません。やはり「予防」となる日々の生活習慣が大切ですね。

そして次に紹介の記事のような意外なことが、認知症の原因のひとつとも考えられています。心身の病気・バランス異常は部分のみに注意を向けるのではなく、「木を見て森を見ず」のことわざにもあるように「体全体と生活環境を含めて総合的に考える」ことが大事ですね。

「歯周病治療はアルツハイマー病の進行抑制につながる可能性」 より引用抜粋

近年歯周病は、糖尿病やアテローム性動脈硬化症などの全身疾患との関連が指摘されている。アルツハイマー病との関連を示唆する研究も散見されるが因果関係については不明だ。

そこでアルツハイマー病(AD)のモデルマウス(APP-Tg)に、歯周病病原菌を投与して歯周病を発症させ、ADの病理の進行への影響を検討したところ、

コントロール群に比べて、認知機能の増悪、Aβの沈着の増加、TNF-αの増加などが確認され、歯周病がADの病態増悪に関与している可能性が示唆された。

(中略)

松下氏は、「本研究は、歯周病とADの因果関係を動物モデルで検討した初めての報告。軽症のAD患者に歯周病治療を行うことがADの進行制につながる可能性が示唆された」と結論。

「歯周病がADを増悪させるメカニズムとしては、口腔から血液を介して、菌、サイトカイン、リポ多糖(LPS)などが脳へ運ばれ、なんらの影響を与えている可能性がある」と考察した。

– 引用ここまで- (続きは下記リンクより)

引用元⇒ 歯周病治療はアルツハイマー病の進行抑制につながる可能性

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