今日は「愛着障害」のテーマの一つで「トラウマのスパイラル」と「共依存の中毒構造」がテーマです。
子どもの屈辱をわかってやる感覚が、私たちにはまだ備わっていません。子どもを尊重しその傷ついた心を知るというのは、知的な行為ではありま せん。もしそれがそんなものだったら、もうずっと前に世間一般に広まっていたことでしょう。(アリスミラー)
まず、トラウマ・PTSDの脳科学による考察として以下の参考PDFを紹介します。
次に、トラウマが子どもの脳と発達にどのような否定的影響をもたらすのかについて、まず「いかに子供時代のトラウマが生涯に渡る健康に影響を与えるのか」を語るナディン・バーク・ハリスさんのTED動画を追加で紹介です。
ナディン・バーク・ハリスさんのTED動画では、「ACE:小児期逆境体験のスコアが高い子供ほど健康結果は悪い」ということが語られていますが、もうひとつ参考となる良書として「犬として育てられた少年 子どもの脳とトラウマ」(紀伊國屋書店)を紹介します。
この本の著者ブルース・D・ペリーは、アメリカの著名な児童精神科医で、トラウマが子どもの発達に与える影響の研究と治療における世界的 権威の一人です。
私が共感した点は、彼が理論や理屈、手法や知識ではなく、「人間関係・環境」という最もベースとなる「日常のバランス」、その点を最も重要なファクターとして捉えている点です。
著者ブルース・D・ペリーは本の中で以下のように語ります。
「トラウマやネグレクトからの回復は、全て人間関係に関わってくる。信頼を再構築し、自信を取り戻し、安心感を得、あらためて愛情を手に入れるのだ。
もちろん薬は症状を緩和するのに効果があるし、治療者と話すことが驚くほどの効果を生むこともある。しかし、たとえ世界一の薬と治療があろうと、思いやりに満ち安定した人間的なつながりがなければ、治癒し回復することは不可能だ。
実際、治療が効果を上げるのは、根本的には、治療者の手法や知識によるものではなく、治療者と患者の人間関係のおかげだ。我々が治療した後にめざましい成長を見せた子どもたちは、例外なく、強力な人間関係のネットワークに囲まれ支えられていた。」
「子どもたちが一番必要としていたのは、豊かな対人関係のある環境であり、自分たちが属し、愛される場所だからだ。」
「虐待されトラウマを抱えた子どもたちにもっとも必要なのは、幼少期のトラウマに起因する痛みやつらさや喪失感をやわらげてくれる健全なコミュニティである。彼らを癒すのに何よりも効果的なのは、人間関係の質と量を増やすことだ。」
「犬として育てられた少年 子どもの脳とトラウマ」は、子どもの教育やトラウマに関することに直接・間接的に関わる人に読んでも らいたいおすすめの本の一つです。
脳科学的な解釈や薬物治療、隔離的な精神医学などの治療も必要なものではあるでしょう。ですが最も大事な点は「日常のバランス」の中にあり、その自然バランスが見失われてる現代社会の在り方・家族の在り方、人間の在り方にある、と痛感するわけです。
「犬として育てられた少年 子どもの脳とトラウマ」より引用・抜粋
「自傷行為も、反抗の印や、気を引くための行為と見られることが多いが、ほとんどの場合、 自らを癒そうとする行為だと考えたほうがいい。
身体を切ると脳からオピオイドが放出されるが、過去にトラウマを抱え、解離に安心を見出した経験のある人にとっては、これが非常に魅力的なのである。
誰が切ったとしてもある程度はオピオイドの作用を受けるものだが、それをはるかに心地よく魅力的に感じやすいのが、 過去のトラウマのせいで解離反応が感作されており、 現在感情的な痛みに耐えている人たちだ。
ヘロインやオキシコンチンのような薬物の使用者にも同じことが言える。一般に信じられているのとは逆に、ほとんどの人はこうした薬物を試したところで、 圧倒的な恍惚感を得たりはりないのだ。
しかし、深刻なストレスと トラウマの後遺症に悩んでいる者は、 薬物で感覚が鈍くなると感じるのではなく、 痛みがやわらぎ、楽になると感じる傾向がある。
解離が、生理学的にも精神的にも、オピオイドで「ハイになった」状態と似ている…、 解離によって変化している場合は、ヘロインのようなオピオイドを選ぶ傾向にある。」 – ここまで – 『犬として育てられた少年』
βエンドルフィンは「内在性オピオイド」であり、脳の下垂体部分から分泌される神経伝達物質のひとつです。内在性鎮痛系にかかわり、肉体的・精神的な苦痛やストレスを抑える働き、多幸感をもたらし、
脳内の報酬系に多く分布。「内因性オピオイド」は、脳内麻薬とも呼ばれ、麻薬に極めて近い構造を持ち、モルヒネ同様の作用を示します。
以下のPDFも参考にどうぞ。
⇒ 第12 章 情動と脳内報酬系 扁桃体,自閉症,PTSD,側坐核,ドーパミン,覚せい剤
国立精神・神経センター神経研究所微細構造研究部の湯浅 茂樹 氏による「脳と心のお話(第四話)「恐怖する脳、感動する脳」を過去記事で紹介しています。 今回の記事とも関連する部分があるので参考にどうぞ。⇒ 不安・嫌悪とイジメの原理 新しい科学ニュース
共依存の中毒構造
ACの場合、トラウマ経験による不足を補うための行動が、エンドルフィンを分泌させて快楽を得るための悪循環のアディクション=嗜癖になっていることがあります。
中毒性のあるアディクション=嗜癖(しへき)とは、様々なタイプがありますが、バランス異常から生じている自我の分離性によって、「強すぎるこだわり=過剰な執着」になり、病的なバランスになっている状態です。
そして中毒性のあるアディクションの一つとして「共依存」という人間関係があるわけですが、例えばDVのような「暴力をふるう側」と「ふるわれる側」のような強弱の差がある場合、
一見すると「強い側が弱い側を一方的に支配している」ように見えます。これはDVだけでなく、支配・束縛の共依存の関係性が働く他の関係においてもそうですが、
内的な機能不全の状態にある男が、「女を支配することで相手から活力を搾取・捕食する=脳内麻薬でハイになる」という中毒状態になっているというだけでなく、
「支配されている側」もまた、受動的アディクションとして「相手にすること・されること」が「快楽を得るための脳内麻薬中毒状態」という悪循環の構造になっていることがあるわけですね。
故に見た目上は「能動的に支配・依存をしている側」だけが支配・束縛・依存しているように見えても、実際は「支配される側」もその立ち位置で相手を「受動的に支配・依存・束縛している」わけです。
これが多くの共依存の場合に、女性、あるいは弱い側の支配・依存・束縛のやり方なんですね。こういう人は、一見すると被害を一方的に受けているだけに見えるんですが、実は「相手を支配・束縛したい強い欲求」が抑圧されて隠れている場合もある、ということです。
ある種の中毒性からACがなかなか抜け出せないのは、そもそも健全なバランス関係を知らずに育っているため、「バランス状態がどのような感覚なのかを感性的に理解していない」からです。頭で理解しても駄目なんですね。
ブルース・D・ペリーに共感したように、心を知るというのは、知的な行為だけでは不十分なのです。感性と理性で総合的に捉えるとき、明確になります。ですが知識も「感性と理性のバランス状態」を概念的に捉える助けにはなります。
ではラストに、外部サイト「ワニなつノート」の紹介をして記事の終わりとします。
以下 「ワニなつノート」引用・抜粋
私には、難しいことは分からないが、 「自傷行為」をする子どもが、自分の体を切って、脳からオピオイドをほしがることと、そうした子どもが成長して、ヘロインをほしがる、ということは理解できる。では、子どもが安心するために必要なことは、ヘロインを注射してあげることだろうか?
それ以前に、その子どもの苦しみが何だったのか。その子はどんなことに苦しみ、それをわかってくれる人、いっしょにいてくれる友だちがどれほどいたのか。そうしたことを考える。
自閉症の人といったって、一人ひとり違う人生と人間関係と、自分自身の人生を生きている。それを、「花粉症の症状が改善する物質がみつかったあ」、みたいに書くなよ。
引用元⇒ ワニなつノート
コメント
此処に書かれている事が、、、孤立したこの四年半ほど月日と、共依存を齎してい関係(DVは無いです。)と、依存と反抗のバイアスを齎す事に成ったトラウマ(フラッシュバックでよみがえる記憶の負のループ)と、、、其れに効果的な救い?を、作り出す事が出来なかった、固定化され、た、環境の中で隙間の持てない生活に、省みる事が出来ます。
「日常のバランス」が、「過剰な執着」から、崩れていった事を、省みる事が出来ます。
先ず、其処からの、脱出を試みなければ成らないのだと、気が付かされます。
其れが、そうは、容易く、無いと言った事も、解ります。
http://www.llhydrogen.com/#!untitled/c58v
↑この作品の、主なテーマである、近親相姦のカップルに観ることが出来る、関係もまた、共依存関係に他成らないと思えます。
(この作品、ネットマンガなんですが、とても面白い。傑作だと思います。)
ps,いつぞや?コメント荒らしてすみませんでした。
このブログ、、、様々に勉強させられます。