「自殺の本当の原因part1」です。
昔に比べて自殺は本当に増えたのでしょうか? こういうことを書くと、すぐに「年間3万人単位の人々が自殺する今の日本の現状をあなたは知らないのか?」と言われそうですが、実はこの数字には大きな錯覚の要素が2つあるのです。
その2つの錯覚の要素の話の前に、「自殺」に働いている「文化的な大きな力学」を先に見ていきましょう。まず宗教的な道徳観の与える自殺許容度(自殺に対してどれだけ厳しく禁じているか、あるいは厳しくないかの宗教的な倫理観の差異)との関連性を見てみましょう。
※この記事で使用の図は全て「社会実情データ図録」より引用
⇒ http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html
これを見ると、幾つかの国を除けば、確かに自殺許容度と自殺率はおおむね比例しているので、自殺に働く大きな文化的力学が、個人の心・精神の在り方に多少は影響しているといっても良いでしょう。
次は自殺率の世界マップです。これを見ると、一目瞭然で特徴的ですね。中南米(ラテン系)や中東・アフリカ(一部)は自殺率が低く、北米、オーストラリア、イギリス、北欧などは中間くらいで、そしてロシア、日本、中国は多く、ヨーロッパも多い国が目立ちます。
ところが、これも統計の錯覚なのですが、ひとつの角度からだけ見ると「自殺が少ないから良い国」ということになるのですが、今度は「他殺率」という角度から、自殺率との関係を統計で見ると正反対の結果になります。
中南米・アフリカは他殺率が非常に高いですね、アメリカも日本より自殺率は低くても他殺率が高いです。(ロシアだけはどちらもかなり高い)つまり自殺が少ない分、他者を殺しているため、
自殺許容度の厳しさは、自殺には有効でも、他殺に対しては否定的な影響になっているかもしれないですね。
自殺は増えたのか?
ではここから最初の問いへの応答になりますが、自殺は本当に増えたのでしょうか?結論から言うならば「増えてない」もしくは、「むしろ徐々に減っている」のです。え?っと思うかもしれません。
それではまず、自殺者数・自殺率の推移のグラフとを見てください。(グラフを更新しています。)
上のグラフは自殺者数ですが、確かに1965年から右肩上がりで増えていますね増えていますね、ですがこれは人口が増えているから相対的に増えているだけであり、その下の自殺率で見てみると、1965年あたりまで下がってきています。(グラフを更新しています。)
大きな錯覚の要素が2つあると先に書きましたが、そのひとつが今見た人口増大による数字の錯覚です。自殺者数の数字は最近は確かに大きいですが、比率でみるとまた違うものが見えてくる。
そして大きな錯覚の要素の2つ目が、「年齢構造」です。今の時代は少子高齢化社会で、過去の日本とは「年齢構造」が異なります。これはたとえば「ガンによる死者数の増大」などもそうなんですが、
ガンは高齢者になるほどほどかかりやすい病気であるために、高齢者が多く増大している今の日本の年齢構造では、当然ガン死の数も相対的に増えてきます。
そして自殺者の年齢構造は、10代、20代は少なく、30代から増え始め、40~60歳にかけてが最も多くなるため、基本的に若者が少なく高齢者が多い社会ほど多くなるのです。
平成22年度のデータを基礎に年齢的に分類すると、自殺者は50歳代が一番多くて18.8%、 60代(18.6%)、 40代(16.3%)、30代(14.5%)その後は20代、70代、80代、10代と続きます。
つまり少子高齢化社会という年齢構造では相対的に増えてくるのです。そのことを考慮して、「同じ年齢構造」で自殺率の推移を見てみると、下の結果になります。(グラフを更新しています。)
なんと、バブル期という特殊な時期を除けば、50年前から殆ど横ばいで変わってない、そして現在はバブル景気の頃よりも自殺率は下がっています。戦後十五年あたりと比較するなら、かなり自殺率は下がっているのです。
これで二つの大きな錯覚を外しました。そうするとようやく「原因」が見え始めてきますね。それでは以下のグラフをご覧ください。
やはり景気と経済の流れは自殺と大きな相関関係があるようです。そしてこれは前からよく言われていることですので、さらにここを掘り下げていきます。
平成22年度のデータでは「就労環境別にみた自殺者率」の内容は無職者が58.9%でダントツに多く 被雇用者・勤めが27.0% 自営業・家族従事者は8.6% 学生・生徒等は2.9%です。
更に、その原因・動機を探ってみると 健康上の問題が49.8%で最も高く、経済・生活問題は23.4% 家庭問題は14.1% 勤務問題は8.17%となっております。健康上の理由が最も大きいんですね。
そしてここにも大きな錯覚があるのですが、「健康上の問題」って聞くと「身体の疾患・病気」を主にイメージしませんか?
ですが、この「健康上の問題」の内訳は、 ウツ病が44.4%で 統合失調症が8.8%、その他精神疾患人が7.8%で、アルコール依存症が2.0%となっており、なんと 7割近くが心・精神的な病 やそれに関係した問題なのです。
それ以外では、身体の病気(32.1%) 身体障害者の悩み(2.3%)となっています。
「健康上の問題」という言葉のイメージでは「重い成人病などにかかった年配の方が、身体苦と絶望から死を選んでいる」とイメージしやすいですが、メインの原因はそうではなかったんですね。
このように「数字」「統計」というものは、様々な要素を複数から組み合わせて立体的に見てみないと、かえって錯覚が強くなってしまいます。
そして「印象」「情報の偏り」によって「実際の状況と思いこみが乖離していること」は他にも多々あるのですが、例えば、「現代・若者は劣化していて悪くなってる、昔の日本社会・昔の日本人はもっと良かった」というよくある思いこみもそういうケースの一つです。
そういう思いこみが統計や数字からハッキリと見えてくることもよくあります。下のリンク先の記事は、「昔の日本・昔の日本人はもっと良かった、今の若者はダメ」という思い込みを検証していますので参考にどうぞ。⇒ 「無意識」の中身は親も子も変わらない
コメント
自殺と他殺の因果関係、、、僕も何となくですが同じ様な感じ?反比例関係に在るように感じてきました。
ロシアには脱帽ですが、、、ハラショーです。(意味不明(゜Д゜;))
標準化自殺←なるほど、目から鱗です。
つまり、あんまり変わってないと(>_<)
健康の問題の八割が精神的な疾患、、、
数字のトリックそのものですね。
騙されてました。
成るほどと、納得。
ならば、何が?精神疾患の原因なのか?
其処こそ、が、この日本の、根本的な改善箇所な、訳ですよね。
僕は、同調圧力に寄っての、認識の同化の強要(洗脳)を強いる事が当たり前の、和を持って尊しとする『大和』的な、太古より受け継がれし問題が根に在る様に感じています。
と!リンク先も読んでみたいと思います。