犯罪心理学から見た 「日本という不思議な国」

 

犯罪心理学という角度から日本を見ると、この国の不思議な姿・民族的な気質の特徴がよく見えてきます。 日本人の犯罪の中で殺人に関しては、身内・内縁者あるいは近しい存在に極端に偏っているという特徴的なデータがありますが、

これは「日本的な殺人」の傾向ではありますが、身内・内縁者あるいは近しい存在の殺人率が他の殺人に対して高いとは言っても、高いのは比率であって、身内殺しの総数は世界と比較するならやはり低いんですね。

つまり日本人は基本的に自制的であり、性格は猛々しくなく、世界と比較するならば、そう簡単には人(他者)を殺さない民族と言えそうです。⇒ 家庭内殺人大幅増は錯覚です

何故、日本人は自分に刃を向けるのか?

総数は少ないとはいえ日本人は何故、身内・内縁者あるいは近しい存在は殺すのにあまり赤の他人は殺さないのか?

「いや一杯他人を殺しているだろう」という方はニュースなどの情報の印象に惑わされ過ぎです。 インパクトは強いですが、実際日本人が赤の他人をいきなり殺すという件数は、世界的に見ても極端に少ないのです。

「日本人は最近モラルや倫理がなっとらん」とか高飛車に言ってる方もいますが、それも印象に過ぎず、殺人・強盗・強姦など凶悪犯罪は、いずれも高飛車な昔の人の世代(昭和中期頃)と比較して皮肉にも年々低下しています。

これは社会の状態、(教育・経済・政治・インフラの水準やバランス)にも相関関係はあるでしょうし、「銃や武器が手に入りやすいかそうでないか」も多少の相関関係はあるでしょう。

では「銃社会」であるかないか?が最も重要なファクターでしょうか?確かにアメリカにおいては、銃と他殺・自殺に多少は相関関係があるでしょう。

ですが、「銃の所持率=殺人率の高さ」と短絡的に結論づけられるほど十分な公式にはなりません。以下の統計図では、世界の民間人の銃の所有率ランキングを比較しています。

 


「他殺率」の参考として以下のページも参考に紹介しておきますね。

◇「他殺率の統計」 ⇒ 図録 他殺率の推移(国際比較)

 

上図の統計でぶっちぎりのトップがアメリカですが、例えばロシアの殺人事件発生率の方が、アメリカより数倍も高く、また他の報告データの統計によれば、「各国で銃規制後も犯罪は減ってない」、あるいは「逆に増えている」という現象すらも確認されていますので、やはり銃や武器のみを最重要原因には出来ません。

追加更新(2018/8)で、以下にもうひとつ、嘉悦大学教授の高橋洋一 氏のツィートを参考用に貼っておきますね。

 

↑上のグラフでは、「相関係数が0,15 米を除くと0.01」となっていますが、相関係数の目安としては「-2 ~ 0 ~ 0.2」「ほとんど相関がない」に該当します。以下参考として外部サイト「統計学入門」の関連ページを紹介しておきます。⇒ 相関係数の強い・弱いの目安

殺人率には「複合的な社会的要因・環境因子」が作用してはいることは事実でしょうが、「同じ環境レベル・状況であればどの国の人も全くじことをする、同程度に行動・反応する」とは限らないんですね。

そして人それぞれの気性・気質に違いがあるように、国にも文化や制度の違いがあり、社会・地域の状態にも差異があります。

日本人は生物学的に「内向的な気質の民族」だと思うわけですね、だから「関係性の濃さ」がトラブル原因の一番になるのだろうと思います。

そしてその最たるものは「自殺」です。「存在を消したい」という衝動が最後は自分自身に向かうんですね。自分以上に自分と関係が濃い存在などいませんから。

また日本社会は、周囲の同調圧力がお互いに首を締め合うような、抑圧的な負の作用を個人にもたらしているので、その外的な圧力の条件付けによって、暗黙の了解的に意識は外側・他罰に向かわずに内側・自責に向かい、そして自虐に向かいやすいともいえるでしょう。

日本は、毎日約80~100人、1時間あたり約3~4人、「自分自身を殺人している国」です。毎日100人近くも自らを殺人していても「1日に3件のペースである他者の殺人事件」(このうち半数は身内に対するもの)しか、ニュースには流れません。

騒がず自己主張せず人知れず腹を切る、黙って切腹するような文化です。

これは日本人的な内向型の気質と、後もう一つ考えられるのは、「日本人の持つ気遣いの精神」ゆえにそうなるのではないでしょうか?

「日本人はガンなどの病気になってもあまり大騒ぎせず、普段と変わらない姿でむしろ周りに悟られないようにする人が多い」と語る、あるガンの専門医師の話を聞いた事がありますが、

アメリカではそうではないようで、「自己アピール」はガン患者も同じで、積極的に表現をするそうです。

例えば宗教的な観念による束縛の効果の検証で、アメリカは「プロテスタント」だから自殺をしないという説もありますが、アメリカは自殺も年間3万人以上もいます。決して少ない数ではないんですね。

また仮に宗教的な観念による束縛の効果だとしても、その場合、生きるストレスや絶望・怒り・幻滅が自殺に向かわない分が他殺衝動に向かっていることになるので、結局、宗教的な観念的による束縛の効果など道徳・倫理に良い影響を与えてないということになります。

私はこれは宗教云々の条件付けとかではなくて、「先天的な生物学的なレベルの民族的な気質と、後天的な文化・社会の質との組み合わせ」によって変わるものだと思うんですね。

だから、欧米の文化の影響をもう一世紀近くも受け続け吸収しているにも関わらず、犯罪心理学的には欧米化しておらず、日本人はやっぱり内向的で真面目、という根本気質はそれほど変わってないんですね。

 

数十年この国に暮らしてきた個人的な日常の感覚

私自身、何十年と日本各地を旅して人っ気のないところから、大都市の夜の裏路地まで様々なところを一人や数人程度でゆっくり歩き見て回りましたが、夜道を歩いていて「殺されるかも」と感じるような凶暴な人はまず見かけません。

深夜に気分転換に一人で都市の裏路地を歩いたりとか、若い頃はよくしていましたが、強盗やギャングに遭遇したとか、ナイフ突きつけられたこともありません。もう何十年と日本に暮らしていて、積極的にアチコチに外出している私ですらこんな感じです。

日本では、躊躇なく殺しに来るようなギャングや、殺人鬼のような人って物凄く少ないんですね。まぁいないわけではないですが、確率的に遭遇しにくい、つまり非常に少ない、ということです。

ガラパゴス島の生き物が全く人を恐れないのは有名ですが、人に襲われた経験や天敵・外敵が少ないと、野生動物でもそうなるんですね。

だから「日本人は性善説が多い」というのも頷けます。何の利害関係も無く、無茶苦茶酷いことをいきなりしてくるような狂人は日本には滅多にいないもんだ、と日々感じて生きているからでしょう。

こういう状態は、人を疑って警戒ばかりしているような精神状態よりは、ずっと健全で良いと思いますが、この感覚で世界も同じだと思っているととんでもない目に合いますね。

世界では物がその辺においてあれば盗むのは当たり前だし、深夜に一人で都市の裏路地なんて歩いていれば、「襲って下さい」とアピールしているようなもんでしょう。 襲う側からすれば「カモネギ」状態。

私は今までの人生で財布・貴重品を数回落としました。ですが全て戻ってきたし、お金を抜きとられてさえいません。財布・貴重品を何回も落とす私も馬鹿ですが、財布・貴重品を何回落としても戻ってくる国は、おそらく世界でも少ないでしょう。

子供の頃はよく喧嘩もしましたが、深刻な感じにはならず、根に持つ感じにもなりませんでした。その時だけという感じです。

不良もいましたし番長もいましたが、彼等が極悪な奴らか?というとそうでもなかったですね。「悪」という程の凶悪な精神を私は彼等に感じませんでした。

体罰ばっかりの時代でしたので、毎日のように気合いのビンタとか、げんこつとか棒で叩かれたりもよくありましたが、私は「ちょっとおかしい感じの先生」に対しても、「悪」という程のものは特に感じませんでしたね。

私が「悪」を感じるのは、もっと無機質な暴力性です。そういうものは、集団の同調圧力やコミュニティーの作る結束と排他性、観念への盲信などが作るもので、そこには人間らしさのかけらもないからです。

正義を主張する人間の姿が、時として悪人と変わらない残酷さを発揮するのも、無機質な暴力性の「悪」が姿を顕す瞬間があるからですね。

コメント

  1. ノムラマサカツ より:

     生物学的な民族気質、、、なんですかね?
     食い物とか?腸内細菌の影響、、、或いは?考えられますね。
     腸内フローラの影響が、心の在り方に影響を与える。
     nhkスペシャルでやってた。

     科学的な検知な気もします。
     猪木さんとか?ドルジさんとかの腸内フローラが、或いはウツの特効薬に成り得る気もします(´▽`)ノだー!
     あぁ~っと、コレも目から鱗です。

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